皆さんはふるさと納税を活用していますか?
全国各地の名産品などを味わえ、税金の控除にもなるという夢のような施策ですが、税収を巡り自治体間の競争が激化したことで、返礼品の内容や返礼率について問題が発生していました。
このような事態に対応するべく、ふるさと納税の新制度が2019年6月から実施されたものの、この新制度から除外されてしまったのが泉佐野市……。
泉佐野市と総務省は国地方係争委員会を通し、侃々諤々(かんかんがくがく)の議論を交わしているのですが、そもそもこの係争委員会とはどのようなものなのでしょうか?
\キャンペーンがお得!/
Contents
国地方係争委員会とは?
国と地方自治体の間に入って、意見を聞き調整をする
地方自治法第250条の7の規定に基づいて総務省に置かれる合議制の審議会(第三者機関)で、2000年4月に設置されました。
法律などの解釈・適用を巡り国と地方自治体に争いが生じた際に、中立・公平な立場から両者の調節を図ることを目的としています。
地方公共団体は、国の関与(助言や勧告・是正の要求などの公権力の行使)が地方自治への越権行為にあたると判断した場合、この「国地方係争委員会」へと審査の申し立てを行うことができます。
申し立て内容に基づき委員会は審査を行い、国の関与に違法性等が認められる場合には当該行政庁に対して勧告し、その結果の通知・公表を実施。
ちなみに委員会は行政内部の機関であるため、勧告などに不服がある場合は、行政外(司法の場)である高等裁判所に訴えることになります。
さらに出された勧告に納得いかないなら、裁判所に言ったるで、というオプションが与えられていますね
委員会は5人の委員(任期3年)から構成されており、参院・衆院の同意を得たうえで総務大臣が任命します。
最大2人まで常勤とすることができますが、基本的には非常勤という扱いです。
会議の招集や議決方法はについては以下のように要件が定めれらています。
- 会議は委員長(委員の中から互選)が招集
- 開催には委員長を含めて3人以上の出席が必要
- 出席者の過半数の同意により可決
- 可否が同数となった場合は委員長権限で決定
国地方係争委員会とは……
国と自治体の意見が食い違い争いに発展した際に、中立・公平な立場から国と自治体の調整役をする。
5人の委員がいるが、非常勤であり必要なときにだけ招集される。
今までの係争委員会の事例は?
横浜市で新しい市税の導入、新潟県で新幹線の費用負担
これまでにどのような事例があったのか見ていきましょう。
①勝馬投票券発売税導入計画(横浜市)
2002年12月、横浜市議会は新たに勝馬投票券発売税を設ける市税の条例改正を可決。
横浜市はこの新税についての同意を総務大臣に求めましたが、大臣からは不同意の通知が行われます。
これに対し、同市は大臣への再協議の勧告を求める旨を委員会に申し立てることになりました。
委員会が取り扱う1例目となるこの事案では横浜市の主張通り、大臣へ再協議を行うよう勧告がなされました。
これを受けて、国は横浜市との協議を再開しましたが、横浜市は2004年2月、「独自課税より税源移譲を進めるべき」として、この新税制度の導入を断念することで発表。
こちらの事例は、最後は自治体側(横浜市)が国に屈する形で決着です。
横浜市が馬券に新しい市税を導入しようとしたら、当時の総務大臣が認めなかった。
再び話し合いをするために横浜市は再協議の勧告を委員会に申し立て。
市の希望通り総務大臣との再協議が認められたものの、最終的には横浜市側が断念して終了
②北陸新幹線整備計画(新潟県)
地方自治体の申し出として2例目となる事案で、北陸新幹線(長野―金沢)の追加工事に関して新潟県知事と国交省が対立しました。
2009年1月に国は新潟県へ工事費用の追加負担を求めましたが、知事は県への説明不足などを理由にこれに対して不同意を示します。
しかし国交省が独断で工事を認可したため、認可手続きには瑕疵があり無効であるとして知事が審査を申し立てました。
この事例では、係争委員会は、「地方自治法245条が定める国の関与」ではなく、この事案は審査対象ではないとして、新潟県の申し出を却下しています。
その後、新潟県の泉田知事は、その結果を受けて、国との話し合いを再開。
最終的には、「国との信頼関係を再構築した」として、負担金の支払いに応じています。
こちらの事案も、結論としては、自治体側が屈する結論になっています。
北陸新幹線にかかる追加工事の費用負担で新潟県と国交省が対立。
新潟県に対して費用を新たに負担するよう求めていたが、理解は得られず。
国は勝手に工事を進めるという悪手を打つ。
係争委員会に掛けるも、結果的に新潟県が追加工事の費用を負担することに……。
今回、ふるさと納税に関して、泉佐野市と総務省の間で何をもめているのか
法令改正で泉佐野市のやり方はNGになった。でも、過去に遡って裁かれる事はおかしい!
地方税法等の改正により、2019年6月からふるさと納税の新制度が実施されることになりました。
寄付対象となる自治体を総務省が指定し、返礼品も総務省が規制しています!
返礼率が高く、品ぞろえもよかった大阪府泉佐野市。
ふるさと納税の王者は、この新制度から除外されました。
「過去、返礼率やギフト券などを配りまくっていた行為」が理由とされていますが、その違法性について総務省ともめています。
法令を施行する際には、安定した法律関係を維持することを目的とした「法令不遡及の原則」というものがあり、施行前の過去の出来事については遡ってその効力が及ぶことはありません。
例外的に、強い公益性がある場合には立法政策として遡及適用が認められるのみです。
法令不遡及(ほうれいふそきゅう)の原則とは……
昨年の法令ではOKもしくはグレーゾーンだったことが、翌年の改正でNGになった。
昨年はOKだったのだから、過去に遡って裁いてはいけないというもの。
確かに同市は新制度実施前の総務省からの指導(返礼品は返礼率3割以下の地元産品に限定する)に対し従わなかったという事実があります。
また、そのやり方は「地方と中央との税収格差の是正」というふるさと納税の趣旨に反すると言えるかもしれません。
しかしあくまで法的拘束力のない「通達」に従わなかっただけであり、その行為について法的な責任が発生することはありません。
このことから今回の総務省の対応は「後出しじゃんけん」といえ、委員会から除外について再検討を要請する勧告が出たのは当然の結果と言えます。
泉佐野市VS総務省のやり取りを詳しく知りたい方は、
【法に違反?】総務省の負けか?!ふるさと納税やりすぎの泉佐野市、一度除外されたが再検討に!!【国地方係争処理委員会ついに見参!】
をご覧くださいね。
まとめ
新制度からの除外という点については総務省に非があると言えますが、一方で法に反してはいない、とはいえ泉佐野市もやりすぎ放題だった部分があります。
ふるさと納税という制度の根幹を揺るがす行為については褒められたものではないと言えるでしょう……。
同市には今後は自発的に見直しを図り、他の地方自治体と共存できる形で新制度に参画してくれることを望みますが、このプロレス・・どうなるのか目が離せませんね。
いずれにしても、結論が出るまでは、泉佐野市にはふるさと納税することはできませんので、お礼品の到着が早いさとふるなどで、オトクなキャンペーンにエントリしておくのが良いでしょう。
\ふるさと納税フル活用!/